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発見は未知ノ奥にあり。 ー東北大学のこれまで、これから

東北大学のこれから、東北地域から日本、世界へと飛躍するビジョンを第22代総長の大野英男が語るインタビューシリーズ第2回。

聞き手は、本学経営協議会委員であり日本経済新聞社参与の長田公平氏です。

大野第22代総長インタビュー Vol.2
「国際化、世界に開かれた大学」
2023年6月

第22代東北大学総長 大野英男

聞き手|日本経済新聞社参与 
長田公平(東北大学経営協議会委員)

今回は国際化、世界に開かれた大学と言うテーマで話を伺います。現状から見ると、一朝一夕には難しい。

東北大学には建学当時から今に至るまで、『研究第一』『実学尊重』と並んで『門戸開放』の伝統、理念があります。日本の大学として初めて女子学生の入学を認めたのは東北大学です。1913年のことです。当時の大学は旧制高校の卒業生しか受け入れなかった。それを専門学校や旧高等師範学校の卒業生にも初めて門戸を開きました。前身の仙台医学専門学校に魯迅が留学していたこともよく知られています。
門戸開放、そしてダイバーシティの力を信じるのが我々の伝統です。

その延長線上に国際化、世界に開かれた大学の発想がある。

そうです。日本を代表する研究大学として国際的な活躍は必須です。世界を舞台に「研究?教育?経営」の三つを担う多様で多彩な才能を惹きつける魅力溢れる大学とならなければなりません。
日本の代表選手としての研究大学を考えると、必然的に世界に開かれた大学、国際化が進展した大学と言う近未来像が、浮かび上がってきます。

前回のお話しの中で、若手の研究者をどんどん世界に送り出していきたい、とありましたね。

研究者はもちろんのこと、学生も積極的に海外へ送り出していきたい。東北大学に入った瞬間からグローバルとはこういうものだなと体感できる、海外との対話と交流が日常になるような環境を作っていきたい。

そうでないと、世界に伍していける人材は育たない。

そうです。才能が開花するには刺激が大切です。学生、あるいは、若い研究者のころから、グローバルな環境を体験してもらいたい。若い人たちが世界とは、先端的な研究とは、こういうものだと実感できる環境が必要ですね。

海外から優秀な研究者を引っ張ってくることも考えないと。

すでに着手し優秀な方に着任いただいています。世界の研究者を見渡してさらに進めていかなければと思っています。並大抵ではないことは良く分かっています。
引っ張ってくると言っても、誰と研究ができるのか、あの人のところだったら行ってみたいといった中核となる人がいないと優秀な研究者は集まらない。世界をリードする研究チームを作っていくためには、核となる人材が重要です。

そういう研究者を世界から集められますか。

東北大学には世界的に強みを発揮している研究分野がすでにいくつもあります。そのような、戦略的領域で世界トップレベルの大学と手を組む。卓越した研究者の長期派遣や招聘を考えています。例えば、シカゴ大学(イリノイ州シカゴ)、パデュー大学(インディアナ州ウェストラファイエット)、ワシントン大学(ワシントン州シアトル)、UCL(ユニバーシティカレッジロンドン)などから開始し、順次拡大していく計画です。

研究者の外国人比率でも高い目標を掲げていますね。

具体的な数字は後日お示ししたいと思いますが、高い比率を考えています。外国人に限らず、そもそも、OECD加盟国の中でも日本はダイバーシティに関して非常に課題を抱えています。ワールドクラスの研究大学としては、世界水準のダイバーシティが当然です。

幅広い人材を海外から

経営という視点からみても、国際的な視野が求められますね。

経営スタッフも、幅広い人材を海外からリクルートしてきたい。欧米の大学あるいは海外企業と提携しようとした時、現状では大きな交渉や契約をとりまとめることができる人材が少ない。国際的な産学連携などを考えると、国際弁護士も必要です。資金の調達?運用といった分野でも専門家が欠かせない。経営スタッフも最終的には5人に1人ぐらいは海外の人材になるのが自然です。

国際戦略を急ピッチで進めるには、司令塔が必要ですね。

トップマネジメントに加え、世界の有識者によるアドバイザリー体制の構築が欠かせないと考えています。
現在すでに多くの海外有識者にアドバイスをいただいています。リサーチ?ストラテジー?ボート5人、ユニバーシティー?アドバイザー5人、多様な専門知識アドバイザー4人です。

すべての学内規程や慣行、サービスなどをグローバルな目線で見直さなければならない。

その通りです。例を挙げると海外から招聘するには、在留資格認定、渡航手配、行政手続、住居探し、ご家族も含めた生活環境の整備などのワン?ストップ?サービスが求められます。最近、新たに「国際サポートセンター」を設置したところ、利用者から非常に高い評価を受けています。長い目でみると、学内公用語は日本語と英語とし、管理職の登用時には、TOEIC 800点を求めるなど、真のグローバルキャンパスへ変貌していかないと。

計画実行にはコストがかかる。大学債発行など自己資金に加えて、国際卓越研究大学の指定を受け1校当たり年間600億円とも言われている資金を得ることが大前提になりますね。

そうです。世界が大変なスピードで変化しています。大学が深めた学術?知識、育てた高度な人材を社会に届ける。大学自身が知識経営体として、新たな社会の在り方を発信し、変革を先導する。社会の期待に応えるにはスピードが重要です。学生?教員?職員のポテンシャルを最大限に引き出し、私たち自身も大きく変わりながら、社会的にインパクトの大きい価値を生み出していく。スピード感を持って推進していく必要があります。

国際卓越研究大学の認定は、東北大学のグローバル化の最後のチャンスかも知れませんね。

この機会に大学全体をグローバルな基準に合致させる。それによって、大学全体や地域の受けるメリットは大きい。冒頭に「一朝一夕には難しい」と指摘されましたが、不退転の決意で、実行あるのみです。

次回は、成長する大学について伺います。

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