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低温で良質なナノセルラーグラフェンの大面積化に成功 ─豊富な資源を使うナトリウムイオン電池の本格的な実用化に期待─

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 教授 加藤秀実
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 炭素原子からなる引張強度と導電性に極めて優れた薄膜のナノセルラーグラフェン(NCG)を自己組織化(注1を利用して大面積で作製することに成功しました。
  • 金属液体触媒が促進するグラフェンの形成に伴って超微細な中空セルが成長する新現象を世界で初めて見出しました。
  • 本研究で作製したNCGを活物質(注2に用いたナトリウムイオン電池(注3は、充放電しやすさのレート特性が高く、長寿命および優れた変形耐性を示すことを確認し、そのフレキシブル電池化に大きく貢献します。

【概要】

炭素原子が六角形に結合した原子1個分厚さの2次元シートのグラフェンが複数積層し、表面にナノスケールの凹凸を付与して高比表面積化したナノセルラーグラフェン(NCG)は、電子?エネルギーデバイス、センサー等の高性能化につながる重要部材として注目されています。

NCG固有の優れた数々の特性は、その作製過程において導入されるクラック等の欠陥によって著しく低減されます。一般的なデバイスサイズであるセンチメートル以上の大きさで、均質かつクラックフリーで継ぎ目のないNCGを作製することは極めて困難であり、これを効率的に作製する新技術の開発が渇望されてきました。

東北大学金属材料研究所の朴元永大学院生(現?現代自動車)、朱修賢助教(現?韓国壇国大学)、加藤秀実教授らは金属溶湯脱成分法によりビスマス液体中で炭素原子が継ぎ目のないNCGを高速で自己組織化し、これが黒鉛化処理を経て高い引張強度と高い導電率を呈することを明らかにしました。このユニークな材料を活物質(兼集電体)に用いたナトリウムイオン電池(SIB)は、高レート、長寿命、かつ、優れた変形耐性を呈することから、SIBの高性能化、フレキシブル化を実現するものと期待されます。

本研究成果は、2024年2月23日付(現地時間)に、科学誌Advanced Materialsオンライン版に掲載されました。

なお本成果は、学際科学フロンティア研究所の韓久彗助教(現?中国?天津理工大学)、先端材料強度科学研究センター、韓国?浦項工科大学校および米国ジョンズ?ホプキンス大学の研究者らとの共同研究によるものです。

図1. ナノセルラーグラフェン(NCG)の作製工程

【用語解説】

注1. 自己組織化:簡単な要素から自発的に複雑なシステムが組み上がること。生物の組織が自然にできること以外に、人間社会における秩序の形成なども広い意味での自己組織化と言えます。

注2. 活物質:電池電極を構成する物質。正極または負極においてそれ自体が酸化還元することで、エネルギーを電池内に蓄えられたり、逆に、電池からエネルギーを放出されたりします。

注3. ナトリウムイオン電池:電解質中のナトリウムイオンが電気伝導を担う蓄電池(二次電池)。海水中に大量に含まれるナトリウムは、供給や地政学リスクの不安がありません。 現状では広く普及しているリチウムイオン電池よりも電気を貯められず電気自動車(EV)に向かないとの見方が言われますが、今後の性能向上次第で将来のリチウムの需要を抑制できると期待されています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所 
非平衡物質工学研究部門
(兼) 先端エネルギー材料理工共同研究センター
教授 加藤 秀実
TEL:022-215-2110
Email:hidemi.kato.b7*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
Email:press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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