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原発性アルドステロン症の新診断基準を確立 最新測定技術に基づく病態解明への一歩

【本学研究者情報】

〇東北大学病院糖尿病代謝?内分泌内科 医員 手塚雄太
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 原発性アルドステロン症(PA)(注1)は、全国で推定400万人が罹患している高血圧疾患です。
  • PA診断に必須のアルドステロン測定法について、最新測定法(CLEIA法)(注2)では、従来法(RIA法)(注3)と比較して、血圧ホルモンであるアルドステロンをより正確に測定できることを明らかにしました。
  • 現在の暫定的な診断基準では、PAの6人に1人が見逃されてしまう可能性が明らかとなり、最新測定法に基づくPAの新診断基準を確立しました。
  • 今回の研究結果は、PAの正確な診断と治療の最適化につながり、命に関わる心臓病や脳卒中の予防に貢献することが期待されます。

【概要】

原発性アルドステロン症(PA)は、一般的な高血圧と比較して、心臓病や脳卒中の危険性が2-4倍ほど高い高血圧疾患です。治療のためには正確な診断が重要ですが、2021年にアルドステロン測定方法が刷新されて以降、PAの診断基準は十分な検討がなされず、そのPA診断精度は不明でした。  今回、東北大学病院糖尿病代謝?内分泌内科 手塚雄太医員と東北大学大学院医学系研究科 佐藤文俊客員教授らの研究グループは、アルドステロンの最新測定法(CLEIA法)の測定精度を検証し、CLEIA法が従来法(RIA法)よりも正確にアルドステロンを測定でき、両者の乖離が77%に上ることを明らかにしました。一方で、CLEIA法を用いた場合の現在の診断基準では、PAと診断されるべき患者のうち17%が見逃されてしまうことが分かったことから、CLEIA法に基づくPA新診断基準を作成しました。これまでの診断方法では、手術で治るはずのPAを見逃していた可能性もあり、今回の新診断基準により適切な手術治療あるいは薬物治療が施され、心臓病や脳卒中の予防につながることが期待されます。  本研究成果は、日本高血圧学会の学会誌 Hypertension 365体育|365体育投注@ にて2024年3月8日にオンライン公開されました。

図1. 最新測定法のCLEIA法とRIA法は、どちらも標準基準と正の相関関係にありましたが(p<0.0001)、CLEIA法では標準基準と同等のアルドステロン測定値を示したのに対し、従来法のRIA法では標準基準よりも高くアルドステロン値が測定される傾向にありました。標準アルドステロン濃度とCLEIA法測定値の差は0.3-2.4%、RIA法では72-80%の測定値の差がみられました。CLEIA法とRIA法の直接比較でも同様であり、両者は正の相関を示しましたが(p<0.0001)、そのアルドステロン値の差は平均で77%でした。

【用語解説】

注1.原発性アルドステロン症(PA):血圧ホルモンであるアルドステロンが、自律的かつ過剰に分泌されることで起こる疾患。アルドステロンの作用により血圧が上昇し、尿中へのカリウム排泄が亢進することで低カリウム血症を来す。また、アルドステロンは動脈の炎症を惹起し、動脈硬化やそれに伴う心筋梗塞、脳梗塞などの心血管病を引き起こす。原因は副腎という臓器にあり、片方の副腎が原因の場合(アルドステロン産生腫瘍)と、両方の副腎が原因の場合(非腫瘍性変化)の場合があり、片方の副腎が原因であればその副腎を手術で摘出することで完治する。

注2.RIA法:放射免疫測定(radioummunoassay)の略。RIA法は、アルドステロン測定法の一つであり、放射能を利用する。日本では2020年度までRIA法でアルドステロンが測定されてきた。

注3.CLEIA法:化学発酵酵素免疫測定(chemiluminescent immunoassay)の略。アルドステロン測定法の一つであり、抗体と抗原の結合反応に由来する光を利用する。以前からアルドステロンの測定に用いられていたが、より精度の高いCLEIA法が2019年頃に開発され、2021年度以降の原発性アルドステロン症診療に用いられている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院 糖尿病代謝?内分泌内科
医員 手塚 雄太(てづか ゆうた)
TEL: 022-717-7611
Email: y.tezuka*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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