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任意のmRNAを簡便に搭載可能な凍結乾燥脂質ナノ粒子製剤の開発 誰でも簡単に使用できる製剤によりmRNAの医療応用の加速に期待

【本学研究者情報】

〇薬学研究科 教授 秋田英万
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 任意のメッセンジャーRNAmRNA)の水溶液を凍結乾燥体に加えることで、脂質ナノ粒子製剤の調製が可能な技術を開発した。
  • 様々な機器やノウハウを必要とする従来法に比べ、温度制御機器があれば使用可能であるため、誰でも簡単にmRNAの治療コンセプトを検証できる。
  • 様々なタンパク質をコードしたmRNAだけでなく比較的低分子量の核酸も搭載でき、両者を同時に導入する必要がある遺伝子編集にも応用できる。

【概要】
 近年、新型コロナウイルスワクチンの開発に見るように、体外で人工的に作成したタンパク質の設計図であるIn vitro transcribed-mRNAIVT-mRNA1)を生体へと導入することで、治療用タンパク質を体に導入する技術が注目を集めています。

 IVT-mRNAは体内での分解性が極めて高く、そのままの投与でタンパク質を効率的に産生させることは困難です。そこで、IVT-mRNAを細胞の内部まで送り届けるため、脂質から構成されたナノカプセルLipid Nanoparticle LNP2)が開発されました。IVT-mRNAを内部に封入したLNPmRNA-LNP)は、細胞外でIVT-mRNAを保護しIVT-mRNAを細胞内へ送り届ける役割を持ちます。しかしその製造には高価な機器やそれらを使用するための経験が必要でした。

 東北大学大学院薬学研究科の秋田英万教授、千葉大学大学院薬学研究院の田中浩揮助教を中心とする研究グループは、LNPを凍結乾燥させた固形製剤に任意のIVT-mRNAを加えて短時間加熱するだけでmRNA-LNPが調製できる技術を確立しました。中空のLNPIVT-mRNAを混合した状態で熱のエネルギーを加えると、カプセルの構造が変化してIVT-mRNAが自発的に内封されます。この方法で作成されたmRNA-LNPは従来の技術で作成されたmRNA-LNPと同等の構造を有し、血液中に投与した場合においても同等の活性を発揮します。

 本製剤を利用すれば、誰でも簡単にmRNA-LNPを調製できることから、mRNA創薬を劇的に加速できると期待されます。

 本成果は2023年1月31日(現地時間)に ACS Nano 誌電子版に掲載されました。

図 1 Ready-to-Use型LNP(LNP(RtoU))の概略図

【用語解説】

注1 In vitro transcribed-mRNA; IVT-mRNA
生体では核の中で行われる転写を、酵素を混ぜ合わせて試験管内で行う過程がインビトロ転写(In vitro transcription)である。これにより作成されたmRNAIVT-mRNAという。

注2 Lipid Nanoparticle; LNP
水に溶けやすいIVT-mRNAを保護するために開発された、脂質からなるナノカプセルである。両者を複合体化するためには、IVT-mRNAの水溶液と脂質のエタノール溶液を混合し相互作用させる必要があると考えられてきた。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 
教授 秋田 英万 (あきた ひでたか)
電話 022-795-6831
E-mail
  hidetaka.akita.a4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科?薬学部 総務係
電話 022-795-6801
E-mail  ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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