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テラヘルツ光と高輝度放射光で見るファンデルワールス力 ―環境感受性を持つ生体適合性材料のデザインに新たな機軸を提供―

【発表のポイント】

  • テラヘルツ光と高輝度放射光を用いてファンデルワールス極限のごく弱い水素結合の形成を観測
  • 結晶を形成しない非晶質試料の明瞭なテラヘルツ分光スペクトル測定に成功
  • 温度の効果を、外部電場に対する物質中の原子の応答特性である誘電率の変化に置き換え、複雑な非晶質高分子量モノマーの振動吸収スペクトル解析に成功

【概要】

東北大学大学院農学研究科 高橋まさえ准教授、理学研究科 松井広志准教授、工学研究科 鈴木誠名誉教授、森本展行准教授、および、高輝度光科学研究センター 池本夕佳主幹研究員らの研究グループは、生体適合性材料である双性イオン分子※1において、温度や圧力などの環境への感受性をつかさどる弱いファンデルワールス力の発現を、テラヘルツ光※2と大型放射光施設SPring-8※3のBL43IRにおける高輝度放射光を用いた測定と高精度第一原理計算※4による理論解析をもとに明らかにしました。

生体適合性材料は、生体と接触した際に拒絶反応を生じないため、人工臓器のコーティングやドラックデリバリーなどに広く応用が期待されます。生体適合性材料である双性イオン分子は、温度や圧力などの環境に敏感であり、室温程度のエネルギーで容易に影響を受けるごく弱いファンデルワールス力が、これらの特性をつかさどっています。本研究では、水素結合検出に有用なテラヘルツ光と、微量試料の測定に有効な高輝度放射光を用いて、ファンデルワールス極限の弱い水素結合※5の形成を低温で観測することに成功しました。本研究は、温度、圧力などの環境に感受性を持つ生体適合性材料のデザインに新たな機軸を提供するものです。

本研究の成果は、2019年9月11日午前10時(英国時間)に英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌 『Scientific Reports』 に掲載されました。

図:低温でファンデルワールス力が有効になり、ファンデルワールス極限の弱い水素結合形成が起こり、熱運動型から水素結合型に変換する

【用語説明】

※1 双性イオン分子
分子内の隣り合わない位置に負の官能基と水素原子を持たない正の官能基とを持ち、全体で中性の分子。

※2 テラヘルツ光
周波数1×1012Hz (テラヘルツ)周辺の周波数の光。適切な光源や検出器がなく、この領域は長く光の暗黒帯と呼ばれていました。近年の光源と検出器の進歩により、テラヘルツ光を利用した研究は急速な進歩を遂げてきました。

※3 大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っています。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(ギガ電子ボルト)に由来します。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、指向性が高く強力な電磁波のことです。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー、産業利用まで幅広い研究が行われています。

※4 第一原理計算
物質の電子状態を計算する方法。実験パラメータを使わない計算で、電子状態、最適構造、物性などを、実験とは独立に予測できます。

※5 ファンデルワールス極限の水素結合
水素結合は、共有結合している水素原子と電気陰性度の大きい原子との間の結合です。その範囲は広く、よく知られている水分子同士の水素結合を中心として、ごく弱いファンデルワールス極限から、強い共有結合極限まであります。水素結合を形成する3つの力(静電力、誘起力、分散力)のうち、ファンデルワールス極限の水素結合では分散力の寄与が最も大きいことが知られています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

研究内容について
?農学研究科 生物産業創成科学専攻
 准教授 高橋 まさえ(たかはし まさえ)
 電話: 022-757-4412
 E-mail: masae*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
?理学研究科 物理学専攻
 准教授 松井 広志(まつい ひろし)
 電話: 022-795-6604
 E-mail: hiroshi.matsui.b2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
?工学研究科 材料システム工学専攻
 准教授 森本 展行(もりもと のぶゆき)
 電話:022-795-7365
 E-mail: morimoto*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

報道担当
 東北大学大学院農学研究科 総務係
 電話:022-757-4003
 E-mail:agr-syom*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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